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平均寿命が延び、誰もが老後の生活を意識せざるを得ない時代となりました。高齢となり、身体が不自由になっても、自分の住まいで快適に暮らせるのが理想的です。そのためには、早めにバリアフリー化について考える必要があります。
建築物におけるバリアフリー
2006年、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法) が、施行されました。
参考サイト:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
バリアフリー建築のはじまり
日本でバリアフリーのきっかけとなったのは、1950~1960年にアメリカやイギリスでバリアフリーに関する法案が定められたことによります。
東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に、内外のバリアフリーの意識の差を目の当たりに1970年代には日本国内でも、車椅子使用者のための住宅が建てられるようになりました。
同時に「福祉モデル都市」への注目が集まり、また将来的な高齢化への懸念の声も目立ってきたことで、バリアフリーが意識されるようになっていきました。
進むバリアフリー化
現在、2,000㎡以上の特別特定建築物については、身体の不自由な人の移動の円滑化を図るための基準が設けられています。2011年時点では対象となる建物の5割についてバリアフリー化が進んでおり、2020年をめどに6割以上の実施を目指しています。
バリアフリー法に基づく条例を策定している自治体は2013年の時点で、13都府県6区市となっており、百貨店や大型スーパーなどの店舗や病院、事務所といったさまざまな建築物でのバリアフリー化が加速しています。
中古マンションのバリアフリー化
中古マンションリフォームの人気が高まっています。手ごろな価格で購入でき、自分の好みの住まいを実現する自由度の高さが魅力です。中古マンションの、バリアフリー化について見ていきましょう。
制度を活用して居住空間をリフォーム
バリアフリー化のリフォームについては、いくつかの補助制度が設けられています。一般的には次の3つを利用するケースが多いようです。
自治体の助成制度
バリアフリーのリフォームへの助成は、各自治体によってその内容が異なります。例えば東京都品川区の場合では、個人に対しては上限を20万円として、工事費用の10%が補助対象となります。
東京都ではほとんどの地域で制度が提供されていますが、都道府県や市区町村によっては適用されていないことがあるため、予め確認が必要です。
リフォーム減税
バリアフリー改修工事で適用条件に合えば、「住宅特定改修特別税額控除」が受けられるようになります。国税庁が提示するすべての要件を満たす必要がありますが、バリアフリー改修工事にかかった費用の一定額が、所得税から控除されます。
介護保険制度
介護保険制度の補助金は、要支援、要介護の定を受けた人を対象として支給されます。支給限度基準額20万円の9割である18万円を上限として、実際の住宅改修費の9割相当額が補助対象となります。※限度額については要支援・要介護の区分にかかわらず、一律とされています。
厚生労働省:住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の推進について
大規模修繕でマンション全体をリフォーム
大規模修繕を機に、マンション全体をバリアフリー化するケースも多いようです。バリアフリーに改修することにより、入居者の層を広げられ、長期的な入居率が高められます。
先程の品川区の例では、マンション管理組合や賃貸住宅個人オーナー向けの補助制度も設けられており、100万円を上限として工事費用の10%が支給されます。
マンション全体のバリアフリー化では、エントランス部分など共用部の段差をなくし、スロープや手すりを設置する、すべりにくい床材に変更する、エントランス照明を明るくするといった内容が考えられます。
一戸建てのバリアリフォーム化
戸建のバリアフリーのリフォーム化でも、先に挙げた補助金制度が対象となります。バリアフリーへの改修にかかる施工費用や、利用できるローンについて見ていきましょう。
バリアフリー施工別費用
戸建の自宅であれば、マンションよりも制限なくリフォームができます。バリアフリー化にかかる費用の目安を見ていきます。
手すりの設置
バリアフリーで比較的着手しやすいのが、手すりの設置です。玄関や廊下、階段、トイレなど、手すりを付けただけでも、ちょっとした動作が楽になります。手すりそのものの費用は材質や形状にもよりますが、数千円から3万円程度、設置費用と合わせても10万円以下に抑えられると考えられます。
引き戸への改修
開くタイプのドアは開け閉めのスペースが必要となるほか、ドアにぶつかりやすいなどの危険性もあります。また段差をともなっている場合も多いため、引き戸に変更するだけで通行しやすくなります。
一般的なタイプのドアであれば、15~20万円程度で改修できます。同時に間口の拡張や、すべりにくい床材への変更などを行う例も多いようです。
ユニットバスへの変更
身体が不自由になってくると、浴槽をまたぐ動作にも支障が出てきます。バリアフリーのリフォームの中でも、要望が多いのがユニットバスへの変更です。
段差が低く、手すりなども付けられるユニットバスへの変更は、50~100万円ほどが相場となります。暖房や乾燥機機能を付加する場合には、さらに20万円程度の上乗せとなります。
60歳を過ぎてもバリアフリー工事可能
ある程度の年齢を過ぎると、若い頃のようにローンが組めなくなります。バリアフリーにはしたいけれど、老後の資金に手を付けるのには不安があるという人も多いのではないでしょうか。
住宅金融支援機構の「リ・バース60」は、60歳以上を対象とした融資制度です。月々の支払は利息だけで、元金の返済は契約者の死後に相続分から支払うか物件売却をするか選択できます。
愛着のある自宅を老後に向けて住みやすくしたいという場合に、通常の住宅ローンが利用できない年代でも安心して借入ができます。
おわりに
住み慣れている家のはずなのに、ふとしたときにつまずいてしまうのは誰しも経験するものです。自宅内の転倒事故85歳以上の高齢者の割合は5人に1人。70歳未満の転倒事故は10%未満となっています。
平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(全体版)PDF形式 – 内閣府の2-3.pdfより
自身や家族のためにも、リフォームで危険な箇所を改善しておけば、年齢を重ねても安心して暮らすことができます。マンション、戸建てを問わずバリアフリーリフォームにはさまざまな仕様があります。自宅のバリアフリー化への着手を、早めに考えておくことが大切です。
最終更新日:2019-06-14