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人生で大きな買い物である住宅の購入に際しては、住宅ローンを借り入れるケースが大半です。
住宅ローンを借り入れて無事物件を購入した後は、最長35年という長期にわたって返済を続けることになり、その負担は決して小さくありません。
その負担を軽減するための方法として広く知られているのが、住宅ローンの繰り上げ返済です。
ローンを先取りして返済していくことで返済総額や返済にかかる期間を圧縮することができる繰り上げ返済ですが、やり方を間違えるとかえって“落とし穴”になりかねないのです。
後悔しない繰り上げ返済をするためのポイントを確認しましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済、2つのタイプ
住宅ローンの繰り上げ返済には、残額を一括で完済する方法と、残額の一部を繰り上げて返済していく方法があります。後者の場合、「期間短縮型」か「返済額軽減型」のいずれかを選ぶことになります。
「期間短縮型」は、毎月の返済額は変わらないものの、返済期間を短くすることができます。
定年退職後のローン返済を避けたい方など早期完済を目指したいケースに適しており、短縮された返済期間に相当する利息分を支払わずに住むため、返済総額も減少します。
「返済額軽減型」は、残りの返済期間を変えるのではなく、毎月の返済額を減らすというものです。
毎月の返済負担が重いと感じている場合やお子さんの教育費などで出費がかさむ時期などに、毎月のローン返済額を直接軽減でき、家計の安定につなげることができます。
住宅ローンの繰り上げ返済の考え方
住宅ローンの返済総額を圧縮可能にしたり、月々のローン返済負荷を軽減できる繰り上げ返済は、リスクを伴わない資産運用ともいわれます。しかし、ただやみくもに繰り上げ返済を行っても、かえってデメリットを生み出してしまうことがあります。
繰り上げ返済を行うにあたって最も強く認識しておくべきことは、「繰り上げて返済するためには、手持ちの資金を使う」ということです。
資産に余裕があり、その余剰資金で繰り上げ返済をするのであれば問題ありませんが、生活資金や銀行預金を必要以上に繰り上げ返済につぎ込んでしまうと手元のお金がそれだけなくなってしまいます。
生活するなかでは、病気やけが、住居の損傷といった予期せぬ出来事があり得るものです。
転職を余儀なくされたり景気低迷の影響を受けて収入が減ることも考えられますし、災害に遭遇してしまうリスクもあります。
そうした場合に備えておくためには、手元にある程度の資金や預貯金を残しておく必要があるのです。
また、住宅ローン控除を受けている場合、繰り上げ返済によってローン残高や返済期間が減れば、住宅ローン控除が受けられなくケースもあります。そのプラスマイナスはきちんと精査する必要があるでしょう。
家計にも資金繰りの考えが必要
企業においては、手元の資金を常に確保しておき、行うべき支払いを滞らせないことはとても重要です。「資金繰り」と呼ばれるこの資金のやりくりがうまくいかなければ、帳簿上黒字であっても企業が倒産に至ることもあるのです。
資金繰りは、家計においても大切なポイントです。
繰り上げ返済で無理をしてしまうと、いざお金が必要になった場合に支払いにまわせる資金が足りなくなり、家計が破綻してしまいます。
たとえ利息を減らして返済総額を圧縮できるとしても、今手元にお金がなければ、何の意味もなくなってしまうといっても過言ではありません。
おわりに
住宅ローンの繰り上げ返済を行う目的は、経済的な安心感を得るためです。
しかし、将来の安心を得るために現在の経済が破綻してしまっては元も子もありません。加えて、低金利の昨今、住宅ローンの返済に資金を投入するよりも、高い金利で資金運用を可能にする選択肢はほかにもあります。
住宅ローンの繰り上げ返済は、経済的安定を得るための方法として有力ではありますが、あくまで手段の一つです。
そのメリットとデメリットを十分理解して、目先の利息軽減だけにひきずられることなく、全体のバランスを考えて計画的に利用しましょう。
最終更新日:2018-01-05