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多くの方にとって、マイホームの購入は人生に何度とない大きな買い物です。広い家、日当たりのいい住まい、使い勝手のいい設備を備えた住居を購入して快適な生活を送る日を早く迎えたいと考えている方も少なくないでしょう。
しかし、そのマイホームの隣に高層マンションが建ってしまったら、せっかくの日当たりのよさも消えてしまうことになります。そのような問題を考える際によく聞かれるのが、「日照権」「日影規制」といった用語です。
マイホームの購入にあたって理解しておきたい用語の1つである「日照権」について、ご紹介します。
日照権のトラブルは多い
念願のマイホーム自体は満足のいくものであっても、近隣の住民の方々や周辺の建物のオーナーとトラブルが発生してしまうことは残念ながらあり得ることです。そのなかでも、日照に関連するトラブルはさまざまなケースが発生しています。
たとえば、高層階にあり日当たりのいい部屋であることを確かめて分譲マンションを購入したのに、半年も経たないうちに隣地に高層マンションの建設計画が浮上してしまい、日照時間がかなり減ってしまうことになるケースなどは典型的な事例といえます。
戸建て住宅の場合では、法律を確認したうえで2階や3階を増築したところ、近隣の住民の方から「うちの日当たりが悪くなった」とクレームが入るといったトラブルもあります。
マイホームを購入する際には、そうしたトラブルに極力遭遇することのないよう、そして万一遭遇してしまったらきちんと対応できるよう、日当たりの権利について理解しておきましょう。
日照権と日影規制の違いについて
「日照権」とは、健康的な生活を送るという観点で建築物の日照(日当たり)を確保する権利です。これはよく聞かれる用語ですが、実は法律や条文などで明文化されているものではありません。
とはいえ、現在では日照権は保護されてしかるべき権利として確立しており、裁判でも多くの判例で日照権が認められています。したがって、この日照権が侵害されたと判断されることがあれば、日当たりを阻害する建築の差し止め請求や、そうした建物による損害の賠償請求などが認められる可能性が生じます。
もう1つ、関連して見聞きすることが多い用語が「日影規制」です。これは、過密化する都市部において日光を公平に分配するためのルールで、ある建物の敷地が日影になってしまう時間を一定の時間内におさめるような建築形態にしなければならないという規制です。
日照権は民法など私法の範疇ですが、日影規制は建築基準法で定められた規制です。つまり、日照権と日影規制はまったく別のものであり、日影規制を守って建設した建物であっても、日照権を侵害されたとクレームを受けることがあるのです。
日照権侵害・判例について
日照権については法律などで定められているわけではなく、「どういう基準を超えたら日照権を侵害しているとみなされるか」ということについても明確な基準はありません。かといって、「日照権を侵害された」と言えば認められるとなれば、高層の建物をつくることが難しくなってしまいます。
そこで、日照権を侵害しているかどうかを判断する際には、「日照が阻害されているという事実」に加えて「その程度が受忍限度を超えていること」を満たす必要があるとされています。
「受忍限度」とは「被害の程度が社会通念上我慢できるとされる限度」のことで、判断に際してはさまざまな事情が考慮されることになります。裁判の事例では、被害の程度や地域性、日当たりを邪魔した建物側からの配慮や法令適合性といった要素を総合的に加味して判断されます。
日照権に関連する裁判の判例には、低層住宅が並ぶ住居地域で鉄骨3階建ての住宅の建築計画が持ち上がった際に建築差し止めが認められた例(名古屋地方裁判所、平成6年12月7日)、隣接する土地に建築された建物に日照被害を受け、受忍限度の観点からその建物の一部撤去は認められなかったものの損害賠償請求が認められた例(東京地方裁判所 平成7年2月3日)など、さまざまなものがあります。
おわりに
家探しで日当たりを重視する方が多いことからもわかるように、日照権は重要な権利です。マイホームの購入にあたっては、周囲の建物建築の状況や日影規制などについて確認しておきましょう。
それでも、もし日照権の侵害トラブルに遭遇してしまうことがあれば、その権利の侵害や受忍限度の判断といった専門知識が必要となります。そうした場合には、弁護士などのプロに相談するのが安心です。
最終更新日:2018-09-25